広告ビジネスを成長させるには、全員が一丸となって取り組む必要があります。小規模ながら勢いのあるチームでも、大陸にまたがる部門を持つフォーチュン500の企業でも、効果的な広告ビジネスのオペレーションを構築する課題は共通であり、その結果がビジネスを大きく左右します。
リテールメディアは、すでに世界のデジタル広告費の5分の1を占めており、さらに拡大を続けています。何百ものコマースメディアネットワークが存在する今、各チームがそれぞれの能力を発揮して広告予算を勝ち取り、成長させる必要があります。
コマースメディアの成功に欠かせない7つの機能的役割があります。自社プラットフォームが稼働を開始する際、例えばマーケティングチームやカスタマーサービスチームが広告営業を担当するなど、ひとりの社員が複数の役割を担う場合もあります。アプローチやビジネスの成熟レベルに関わらず、以下の役割がカバーされていることを確認してください。
広告ビジネス責任者は全体的な戦略を指揮し、プロセスやテクノロジーに関する重要な決定を行います。この役割を担う人物は、CFOやその他の経営幹部に対して収益に関する責任を負い、必要な資金と人員を確保しながら広告ビジネスが財務目標を達成できるように努めます。
また、広告ビジネス責任者は、四半期ごとに戦略を確認し、月に一度、運営委員会による会議を開き、プログラムのスタンドアップミーティングを毎週実施することで、コーチの役割も果たします。このような定期的なチェックインにより、チームメンバー全員の足並みが揃い、進捗を把握して問題に速やかに対処できます。
Go-to-Market(GTM)戦略部門の役割は、商業計画を策定し、広告ビジネスの目標および主要な成果(OKR)を作成して達成することにあります。GTM戦担当者は、明確な目標と評価指標を定義し、強固なセールスオペレーション(Sales Ops)の流れを構築することで、すべてのチームメンバーが、セールスパイプライン、収益目標の達成、顧客拡大において、何を基準に「成功」とするのかを理解できるようにします。また、プロダクトチームと密接に連携し、「どの広告在庫を優先すべきか」「どのような新機能の開発を検討すべきか」などについてガイダンスを提供します。
広告営業チームは収益創出の最前線に立ち、あらゆるアウトバウンドセールスを行います。具体的には、営業トークやメール、イベントなど、さまざまな手段を使って広告主の関心を引き、潜在顧客が自社広告プラットフォーム独自の価値提案に魅力を感じるように働きかけます。
広告営業チームのパフォーマンスは、広告主の契約指標と新規パイプラインの創出によって評価されます。これらの営業スペシャリストは、プラットフォームの機能、アドテック市場のトレンド、広告主が抱える課題や悩みを深く理解している必要があります。広告営業チームは通常、既存のパートナーマネージャーやマーチャンダイジングチームと密接に連携し、企業の中核を成すEコマースサイドで築かれた関係を推進します。
カスタマーサクセス(CS)部門は、オンボーディング、教育トレーニング、商品に関するフィードバックの収集など、広告主ベースのライフサイクル全体を管理します。多くの場合、CSチームは広告主の質問に対応する最初の窓口であり、同チームが問題を迅速かつ効果的に解決できることが、広告主の信頼とロイヤルティを維持する上で極めて重要です。
CSチームは、広告主を維持するだけでなく、最も有望なアップセルやクロスセルの機会を特定する上で重要な役割を果たします。顧客アカウントの健全性と成熟度を把握することで、CS部門の責任者は適切なタイミングで関連ソリューションや追加サービスを提案し、広告ビジネスのさらなる収益拡大を促進します。
プロダクトオーナーは、広告プラットフォームの技術的なバックボーンを担います。広告フォーマットのロードマップを決定し、広告主が購入するWebサイトやアプリ上の実際の広告スポットやプレースメント(いわゆる「インベントリ」)を管理します。プロダクトオーナーは開発チームと緊密に連携し、さまざまな広告仕様への対応や、ターゲティングオプション、レポート機能のサポートを強化します。また、テクノロジーベンダーや外部プラットフォームとの関係も統括し、パフォーマンス、スケーラビリティ、ユーザーとの関連性を高めるコマースメディアスタックを構築します。
マーケティング部門は、すべてのブランディングアセットの開発と、プラットフォームの広告ソリューションに関する広告主の知識を深める活動を担当します。マーケティング部門が作成する資料には、ランディングウェブページのコンテンツ、広告リソースセンター(施策ガイドやケーススタディなどを提供)、対面ワークショップ用の広告トレーニング資料などが挙げられます。また、マーケティング部門が関連するオンラインラーニングポータルを管理することもあります。マーケティングチームの取り組みは、自社の広告プラットフォームの認知度を高め、信頼できるマーケティングプラットフォームとしてブランドを確立するのに役立ちます。
データ分析チームは、広告主をより効果的に引き付け、維持し、成長させるのに役立つ貴重なデータを広告ビジネスの営業チームとオペレーションチームに提供します。このようなデータ提供には、広告営業でターゲット化されたセールスピッチを行うのに必要なセラーのセグメンテーションやレベル分けといった非常に重要なタスクが含まれます。データ分析の重要性はいくら強調してもしすぎることはありません。データアナリストは広告収益の予測や広告主の増加計画の責任を担います。需要と供給のダイナミクスに基づいてプラットフォームにおける広告総収益の前月比の伸びを予測し、収益目標を達成するために獲得しなければならない広告主の数に関する目標を、営業チームとマーケティングチームに対して設定します。
適切な役割を配置することは重要ですが、広告ビジネスの成功は、これらのチームがいかにうまくコラボレーションできるかによっても大きく左右されます。以下ではベストプラクティスの一部をご紹介します。
早い段階で部門横断的な定例ミーティングを設定し、進捗状況の確認と迅速に決定できる体制を作ります。このようなタッチポイントとして以下が挙げられます。
アカウントマネジメントチーム(カテゴリーマネージャー)と広告営業チームの間に共通の目的と主な収益達成目標を設定します。このように共通の指標を持つことで、両者がすれ違ったり、互いに邪魔し合うことなく、新規顧客の獲得や既存顧客の成長に向けて連携するようになります。また、これにより既存顧客のアカウントマネージャーが新しい営業担当者をサポートし、顧客に広告ソリューションを共同提案してアップセルのチャンスをつかむ必要性が生まれます。
データ分析チームと社内の他の主要部門との間に緊密なパートナーシップを築く必要があります。広告営業チームとマーケティングチームがデータを活用してセラーのターゲティングを行い、広告主のフィードバックに応えるラーニングコンテンツを作成し、解約や拒否の理由に基づいてマーケティング資料を作成するように促します。さらに、広告営業チームは分析レポートを使用して、セールスサイクルやセラーを広告主にする活動におけるボトルネックを特定し、見込み客から顧客、見積もりから入金までのプロセスを改善できます。
早い段階から頻繁に経営幹部に相談し、新しい事業を支援してもらえるように働きかけます。社内の障害を克服したり、必要な承認を得たりしなければならない場合に、これらの人物の影響力と決定力が頼りになります。また、経営陣に定期的に現状を報告することで、広告事業の優先性を維持し、必要なリソースやサポートが得られるようになります。
請求書の発行や財務システムのコンプライアンス、規制基準の遵守、ブランドセーフティや契約管理を含むポリシーの遵守などにおいて、財務および法務チームと密接に連携します。この緊密なコラボレーションにより、顧客関連のリスクや財務上のリスクを軽減し、広告ビジネスにおける広告主のカスタマーエクスペリエンスのあらゆるタッチポイントで円滑なオペレーションを確保できます。
広告ビジネスの成功には、適切なチームを編成することが不可欠です。7つの重要な役割をカバーし、部門横断的なコラボレーションのベストプラクティスを実施することで、広告主と消費者の両方に価値を提供しながら持続可能な成長を促進し、広告収益を最大化しやすくなります。